チェンジ・ザ・ルール(ザ・ゴール3コミック版)要約&感想「月曜日が楽しみな会社」にしよう!

・1970年代にドイツのSAPで誕生したERPは、1990年代に日本でも導入されはじめました。今では、大企業でも中堅企業でも導入されています。従業員規模1,001人以上の企業では70%以上が導入しているという調査結果もあります(参照:キーマンズネット,ERPの利用状況(2022年/前編),2022.07.07)

・ERPとは Enterprise(企業) Resource(資源) Planning(計画)の略で、企業の経営資源を一元に管理し、企業全体の最適化を実現するための経営手法で、これを実現するための情報システムはERPソフトと呼ばれています。

・ザ・ゴール3のストーリーでは、DaRZ社(ERP開発・販売・導入会社)の大手顧客である、ピエルコ社から300億円以上も投資したERPの導入によって、どれだけの利益を稼いだかという疑問を投げかけられます。

・調べてみると、驚くことにERP導入によって直接的な利益はほとんど生まれていなかったことが分かりました。

・しかし間接的には、①請求書のミス削減によって売掛金の回収期間を短縮、②結果として支払利息の削減、③原材料の購入一元化による原材料コストの削減、④在庫の削減による維持コスト等の削減、などの利益が生じ、約4年で投資コストを回収できる計算になりました。

・でも、システム導入の効果は、本当にこれでいいのでしょうか?導入の本当の目的は何でしょうか?

1. ボトルネックを考慮してリードタイムを短縮する

(1)計画段階 ドラム・バッファー・ロープ …ボトルネックを中心としたスケジューリング機能
(2)実行段階 バッファー・マネジメント  
…実行段階の不確実性に柔軟に対応するためバッファー(ゆとり)を管理する機能

・製造現場でリードタイムを短縮することは、最も大切なことの1つです。

・TOC(制約理論)を用い、「ドラム・バッファー・ロープ」を実行することによってリードタイムの短縮が実現できます。

・「ドラム・バッファー・ロープ」とは、ボトルネックのペースに合わせて資材をタイミングよく投入する方法です。納期に間に合わせるギリギリまで、すべての資材の投入を行わないということです。

・これに加えて、「バッファー・マネジメント」という機能を導入しました。

・「ドラム・バッファー・ロープ」は計画段階における、ボトルネックを中心としたスケジューリング機能ですが、実際の現場では、①機械の故障、②従業員の病欠、③部品の納期遅れ、などの様々なトラブルが発生します。

・そのため、実行段階における不確実性に柔軟に対応するためバッファー(ゆとり)を管理する機能として、「バッファー・マネジメント」を導入しました。

・これにより、急な問題が発生した場合にも、迅速に対応でき、納期遅れを防ぐことができます。

ザ・ゴール3のストーリーでは、スタイン産業という中小企業がERPシステムの導入と併せて、「ドラム・バッファー・ロープ」と「バッファー・マネジメント」の採用によって、売上の2桁UPを達成することができました。

2. チェンジ・ザ・ルールにより、企業変革を成し遂げる

テクノロジーに関する6つの質問
(1) テクノロジーの真のパワーとは?
… 情報やデータを処理する能力によって、これまで出来なかったことが出来るようになる。
(2) テクノロジーで取り除かれる限界? …テクノロジーであらゆる企業活動の見える化
(3) これまでの限界に対応していた古いルールとは?…各部署の個別最適ルールの可能性大
(4) どんな新しいルールを用いるのか? …テクノロジーのメリットを最大限活用できて、利益を飛躍的に伸せるルール。全体最適のルール。
(5) ルールの変化によるシステムの変化? …全体最適のルールを入れて、システムを (シンプルに)変化させる。
(6) いかに変化を起こすか?…それまでの限界を前提にしたルールを変える  Change the Rules
ザ・ゴール3のストーリーでは、DaRZ社のCEOをはじめとするメンバーたちは、ザ・ゴール(コミック版)の主人公である、ユニコのCEO新城吾郎氏にTOCを直接、教わってみることにしました。
・デジタル化は手段であり、デジタル化単体では企業の利益を飛躍的に伸ばすことはできません。
・これまでの限界を取り除き、既存のルールを変える、「チェンジ・ザ・ルール」を実行しなくては、せっかくのテクノロジーのメリットを享受することはできません。
ザ・ゴール3のストーリーで、新城氏がDaRZ社に投げかけた質問が上記のテクノロジーに関する6つの質問です。
・(1)と(2)はシステム導入時によく言われていることです。しかし(3)以降は、システムを導入するだけでは解決できないことです。
・「 (3) これまでの限界に対応していた古いルール」とは、全体が見えていない中で、個々の部署が個別最適を目指して作っていたルールです
・例えば、①個々のワークセンターの効率をUPする、②早い資材投入を行うことで、早い仕上りを目指す、③バッチサイズを大きくすることにより効率的に生産する、などが本書の中には挙げられています。
・(4)は、個別最適のオペレーションを全体最適に変えるためのルールを提供するのが、TOC(全体最適マネジメント理論)だ、と新城氏は言っています。
・(5)では、個別最適を目指さず、全体最適のルールを目標にして、システムを (シンプルに)変化させる。と述べられています。
・そして最後の(6)のステップで、既存の個別最適ルールと決別して、「チェンジ・ザ・ルール」を行い、行動パターン及びカルチャーを変革することによって、企業に利益を、顧客にバリューをもたらすことが可能になるのです。

3. ピエルコ社の事例「月曜日が楽しみな会社」にしよう!

ザ・ゴール3のストーリーでは、DaRZ社は前述の、大手顧客である、ピエルコ社へTOC機能を付加したERPを導入します。

・「ドラム・バッファー・ロープ」と「バッファー・マネジメント」の採用によって、導入後3か月で工場の処理能力が40%もUPしました。しかし、在庫が増加し利益は全く上がりませんでした。

・なぜこのようなことが起こったのでしょうか?1つは需要予測が難しいことでした。2つめは地域倉庫に在庫を持つ(工場では在庫を持たない)というこれまでのルールを見直さなかったためです。

・そこで、需要予測の精度が最も高い工場に在庫をストックすることによって、①在庫の目標レベルを引き下げ、②地域倉庫間での製品の移動が無くなり、③仕事のゆとりを生み出す、ことが出来るようになりました。

・新しいルールのもとで、従業員が新しい働き方をして、全体最適のオペレーションを行うことで、部署を超えて従業員が助け合うようになり、「組織の壁」が消滅しました。

・その結果、従業員のモチベーションが上がり、「月曜日が楽しみな会社」、すなわち、働くことが楽しい会社に生まれ変わったのです。

・テクノロジーの進歩は素晴らしいものがあります。現代に生きる私たちはその恩恵に浴しています。しかし、どんなに進歩したテクノロジーでも、上手に使いこなさなければ何の意味もありません。

・TOC理論を応用したシステム導入と共に、「チェンジ・ザ・ルール」を行い、顧客にバリューを提供し、その結果として自社には利益をもたらすような変革を、御社でも挑戦してみませんか?

 

(出典)エリヤフ・ゴールドラット(原作). コミック版 ザ・ゴール3 -チェンジ・ザ・ルール(邦訳)ー. 監修:岸良裕司, 脚色:青木健生, 漫画:蒼田山. ダイヤモンド社, 2023

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